実はわたし、お姫様でした!〜平民王女ライラの婿探し〜
(仮にも王配になろうって言うなら、その辺は押さえておいてもらわないと)


 そんなことを考えていたら、ランハートはこちらに向かって身を乗り出した。彼の綺麗な顔がゆっくりと近づいてきて、わたしは思わず身を強張らせる。その瞬間、指先にチュッて柔らかな感触が走って、わたしは目を見開いた。


「――――姫様のせいですよ?」

(何それ……何それっ!)


 そう言って微笑むランハートはあまりにも魅惑的で。身体中の血液が一気に沸騰するのが分かった。


「~~~~~~アダルフォ、帰るわよっ!」

「はい、姫様」


 それまで黙って待ってくれていたアダルフォは、小さく頭を下げてから馬車の隣に並び立つ。


「じゃあまた。気を付けて帰ってくださいね、姫様」


 ランハートは手を放してから、至極楽しそうに手を振った。


(言われなくても気を付けるわよ)


 馬車の窓を閉めながら、わたしはフイと顔を背ける。
 何やら一気に疲れてしまった。目を瞑りつつ、一呼吸吐く。


(アダルフォには悪いけど、馬車の中で少し休ませてもらおう)


 そんなことを考えていたら「アダルフォ、姫様をよろしくね」っていうランハートの声が、微かに耳に届いた。


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