だって、恋したいもん!

第百七十九話  モデラート







キーンコーンカーンコーン…


先生「はーい、終了ー! 答案は前に回してー」



由依「今回の化学、難しくなかった?」

理佐「うん、ダメ!平均点低いんじゃないかぁ……」

由依「だよね?」


理佐「由依、次は美術?」

由依「そっ、美術室だわ」

理佐「私は音楽室……じゃあまた後でね」

由依「うん、じゃあね」


と、由依と別れて音楽室へ向かった。






音楽室へ入るといつもの席に彼と美波がすでに着席していた。


美波「理佐ぁー♪」

と、美波が手招きして呼んでいた。

理佐「早いね」

美波「そうなの!よしおくん、一目散に行くんだもん」

理佐「どうしたの?」

義雄「ブツブツブツブツ……」

理佐「え?怖いー!」

美波「せっかく覚えたの忘れるからって走ってきてずーとブツブツ言ってるんだよ」

理佐「アッ、ハ……ハ………」

美波「なーんかお経読んでるみたーい」

理佐「そっと……しといたほうがいいのかな?」

美波「そうだね」


そして先生が音楽室へ入ってきたと同時にチャイムも鳴った。


高嶋先生「はーい、用紙配るからすぐに始めていいぞー」

と、窓側の席から順に用紙が配られた。

私の元へ来た頃にはほとんどの生徒がもう書き始めていた。



美波「先生ずるいよぉー、もうみんな始めちゃってるじゃーん」

高嶋先生「10問だけだからすぐ終わるだろ?」

と、先生が言うので試験問題に視線を落とすと本当に10問しかなかった。

しかも全て選択問題……


義雄「うおっ!全部選択式じゃん!」

と、彼も驚いていた。


高嶋先生「出来た者は前に答案用紙出しに来いー!そしたら他の教科自習していいぞー!」

生徒たち「えー!先生太っ腹ぁー!」

高嶋先生「静かにしろ!他の教室も試験中だ!」

生徒たち「はぁーぃ」

と、一気に声のボリュームが下がった。



高嶋先生「教室からは出るなよー!」

先生はそう言って黒板の横に置いてある椅子に腰かけた。






そして十分ほどすると続々と生徒たちが教壇の机に答案用紙を置いて席に戻り自習を始めた。


私も終わったので出しに行こうと立ちかけた時に彼が小声で…

義雄「渡邉さん、9番何?」

と、聞いてきた。


理佐「え、教えちゃだめだよぉ…」

と、小声で答えたが彼は手を合わせ片目を瞑り「お願い!」とジェスチャーしていた。

私は仕方なく「もぉー!」と小声で言いながら指で「3」を作り答えのモデラートを示した。

彼は「ありがとう」と机の上でミニ土下座をしていた。


そして用紙を提出して席に戻り次の試験の倫理のノートを広げた。








第百八十話へつづく…












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