だって、恋したいもん!
第五十一話 いいパス
キーンコーンカーンコーン…
4限の終わりを告げるチャイムが鳴った。
昼休みだ♪
由依「理佐ー♪ 行こっか?♪」
理佐「うん、由依今日はお弁当なの?」
由依「持ってきた♪」
と、言ってピンクのギンガムチェックのお弁当袋に包まれたお弁当箱を見せてくれた。
いつも購買でパンを買ってる由依だったけど…
理佐「お母さん作ってくれたの?」
由依「うぅん、自分で!」
理佐「おー!さすが由依!その女子力羨ましいわー」
由依「あんたも練習しとかないと西野くんとデートの時求められるよー!」
理佐「マジ!?」
由依「そりゃ男は彼女のお弁当食べたがるでしょー!」
由依「今から練習しとかなきゃヤバイよー」
理佐「そっかぁ…」
由依「相手が西野くんじゃなかったとしてもいずれはね、作んなきゃいけない時がくるんだから」
理佐「えー……西野くんがいぃなぁ~……」
由依「ま、そりゃあんた次第だわ」
理佐「ふぇ~ん……」
そして私たちは中庭、ここは「ウィーンの森」と名がついた場所だが誰も恥ずかしさからかその名を呼ばない。
おそらく歴代の卒業生たちもそうだろう。
ベンチに座るとすぐに茜が走ってきた。
茜「おー早いねー、もう来てたの?」
由依「そりゃあたしたちの教室が一番近いからね♪」
茜「あれ?美波はまだ?」
理佐「うん、まだだね?」
由依「声かけてきたらよかったかな?」
茜「ま、すぐ来るでしょ?この手の話に食いついてこない子じゃないから」
由依「そうだね」
そしてお弁当を広げ始めると茜がベンチをまたぐように足を広げて座った。
理佐「ちょっと茜ー! 脚!脚ー!」
茜「え、何?」
茜「下なら短パン履いてるよ」
と、スカートをめくって見せてきた。
理佐「もぉー!女の子なんだからー!」
茜「そんなの誰もあたしに求めてないって」
理佐「でも男子の視線がー……」
茜「みんな女だと思ってないって」
理佐「えー、もぉー……!」
と、言っていると美波が走ってきた。
美波「ごめーん、お待たせー!」
茜「遅かったじゃん」
美波「ごめんごめん、部活の顧問が放課後居ないからって部室のカギ取りに来いって職員室行ってたから…」
由依「大丈夫、まだ来たとこだよ♪」
美波「あ、ホントにー?」
美波「四人で集まるの久しぶりだね♪」
茜「もうちょい部活がなければねー」
由依「まぁ運動部はしょうがないでしょ」
茜「今の顧問は鬼だからねー」
茜「ここのレベルでインターハイとか総体とか無理だと思うけど」
理佐「えー、でも茜だったら行けるんじゃないの?」
茜「個人はね。でもダブルスと団体は無理だよ」
理佐「そうなんだ…大変だね」
茜「いやいや、そんなことより大変なのはあんたでしょ?」
理佐「え……?」
茜「あたしがあれだけストレートに言ってんのにまるっきりわかってないじゃない?」
理佐「うーん…私もあの時びっくりしたけど…」
由依「まぁ理佐にも原因はあるんだけどねぇ~」
理佐「えー、何よぉー!」
由依「はっきり言わないまでももうちょっと『好きアピール』しないとー!」
理佐「えー、でもぉ……」
茜「そうだよ!並んで歩くんなら腕ぐらい組めばいいじゃん!」
理佐「えー!そんなの無理だよぉー……」
茜「そんなこと言ってたら誰かにとられちゃうよ!?」
理佐「えー、やだよぉー…」
茜「女テニでも西野くんのバンド人気あるんだから」
理佐「え……? そうなの?」
茜「うん、『西野くん』て個人名は出てきてないけどあのバンドは飛び抜けて上手いでしょ?」
由依「うん、確かに!」
美波「そうだよ!去年の三年はプロ並みに上手かったけど、今の三年は全然ダメでしょ?」
茜「そうだよ!だから西野くんのバンドが今一番注目だからね」
理佐「うん、確かに上手いとは思うけど…」
茜「特に一年がやたら聞いてくるからね!」
理佐「え……何て?」
茜「『軽音はライブいつやるんですか?』とか『先輩、軽音の人と仲いい人いないんですか?』とか…」
茜「ミーハーなんだよねー!」
理佐「えー!そぉなのー?」
茜「『ギターの人がカッコイイ』て言ってる子もいたよ」
理佐「えー! ダメー!!」
由依「まぁ恋愛は自由だからねー♪」
理佐「えー、そんなぁ……」
美波「あたしも西野くんに近づいちゃおっかなぁー♪」
理佐「ちょっとぉー美波ぃー!!」
美波「キャハッ!♪ まぁタイプでないこともないんだけどねー♪」
由依「おー!恋のライバル出現か!?」
理佐「もぉー! 冗談やめてよぉー!」
茜「まぁでもホントマジでアタックしないと手遅れになるよ!」
理佐「わかってるよぉ……」
美波「まぁ次の音楽の時間はあたしに任しときな! いいパス出してあげるよ♪」
理佐「えー……何か怖いなぁ……」
と、ノリノリの美波に一抹の不安を覚える私だった……
第五十二話へつづく…