高嶺の花と呼ばれた君を僕の腕の中で包みたい

「助けてあげたかったのにっ……」


 父親の癌がきっかけで医者を目指し、男性恐怖症ながらにも耐えて頑張ってきたのは癌の患者さんを一人でも多く助けたいから。もちろん残念な結果になってしまったことは何度もある。そのたびに華は心を痛めていた。もちろん医者が毎回心を痛めていたら自分の精神がおかしくなってしまうことがあることも分かっているけれど、華にはどうしても堪難く、いつも一人で泣いて、気持ちを落ち着かせていた。


 今日も震える手を握りしめながら、華は誰も居ない備品庫に電気もつけず、息を潜める。


「ふっ……うぅ……ふっ……」


 ひっそりとしゃがみ込み、両手口元を抑え込んで声を押し殺す。


「やっぱり。泣いてると思った」

< 38 / 53 >

この作品をシェア

pagetop