溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る
「それは……確かに、そうかもしれませんが」
「しれませんが? でも無理だって?」
「そんなことはないです。ですが、その、まだ心の準備的なものが……」
受け入れなくてはならない状況と、自分の気持ちと、それがうまいこと処理できず混乱しているのだろう。
それなら、多少強引に一緒に眠る流れに持っていってしまった方がきっといい。
「なので、今日のところはひとりで眠っても……?」
「ここでひとりで? もしかしたら、さっきの蜘蛛が出るかもしれないのに?」
「えっ、蜘蛛⁉」
「行方不明になったんだから、有り得るよな」
少し意地悪な言い方だが、使わない手はない。
途端に困った顔になったところを、近付き手を差し伸べる。
戸惑いながら乗せられた手を握って、そのまま肩を抱き部屋を連れ出した。
「まぁ、蜘蛛がどこに出るかはわからないけどな」
「えっ! じゃあ、どこで寝ても結局一緒ですよね?」
「でも、一緒に寝てればすぐに俺が対処できる」
そんなやり取りをしながら寝室へと入る。広いベッドが鎮座するその空間を前に、彼女の緊張がダイレクトに伝わってきた。