溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る
「あの、晃汰さん。すみませんでした」
「さっきのが、前に言っていた縁談相手か」
「はい。衣装店から出てきたところに声をかけられて。あの場所で、立ち話に」
私が答えるとまた車内に沈黙が落ちる。
それが私たちの間で初めて流れる居心地の悪い空気に感じ、組み合わせた指先を意味なくこねていた。
怒っているのかもしれない。
さっき小室さんに迫る晃汰さんは初めて見る、恐怖を覚える姿だった。冷徹で、殺気さえ感じ、とてもじゃないけど口を挟める状況じゃなかった。
沈黙は続き、車はとうとうマンションまで到着してしまう。
普段通り駐車をし、一緒にエントランスホールへと向かう。
無言のまま手は取られ繋がれたけれど、相変わらず言葉はないまま。
エレベーターへ乗り込んでも繋いだ手は離されない。
「晃汰さん……?」
か細い声で呼びかけたものの、私を見ることもなく返事も返ってこない。