溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る
テーブル脇に置いたスマートフォンに目を落とすと、時刻は十五時十分前。
今、晃汰さんは心臓血管外科学会の学術集会に出席している。私は終わるまでの間、近くで待機しているところだ。
そろそろ会の終わる時間が近付き、ノートパソコンを閉じた。
今日はこの後、病院に戻ってから、一件患者様のご家族からオペの承諾を得る約束がある。
それが終われば本日の業務は終了だ。
荷物をまとめ、カフェを出て会場を目指す。
まだ解散後の賑やかさはなく、入り口付近で晃汰さんが出てくるのを待つことにした。
「水瀬君の、秘書さんよね?」
突然、後方から声をかけられ肩を揺らす。振り返ると見知らぬ女性がひとり私の前に立っていた。
パンツスーツを身につけた、真っ黒いワンレンボブのスタイルのいい女性。顔のパーツが整っていて、クールビューティーな美人だ。
しかし、どちらの方か記憶になく、とりあえず頭を下げる。
「いつもお世話になっております」
私の挨拶に彼女はなぜだかふふっと笑った。
「アメリカにいた頃お世話になってたのは私の方よ。あ、紹介が遅れたわね。私、水瀬君と同じ心臓血管外科医の五十嵐澪と言います」