溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る


「あら、違うのね。ごめんなさい」


 五十嵐さんは謝罪を口にしつつも、クスッと笑う。

 その表情には、申し訳ない気持ちは窺えない。


「でもね、ひとつ言わせて。あなたより、同じ医師の私の方が彼に相応しいわ」


 思わぬ言葉に、ぐさっと胸に鋭利ななにかが突き刺さる。

 衝撃で瞬きを忘れた私をふふっと笑う余裕を見せつけ、五十嵐さんはさらに一歩私へと距離を詰めた。

 そして、私にだけ聞かせるように耳元に近寄り「それに……」と意味深なトーンで囁いた。


「私と彼は、仕事だけじゃなくて、プライベートでも相性がいいのよ」


 えっ……?


 静止してしまった私を、五十嵐さんはふふっと笑う。

「では、失礼するわね」

 囁くようにそう言い残し、彼女は晃汰さんがまだ出てこない会場の中へと入っていった。

 ひとりになっても、今言われた言葉がべっとりと耳の中に貼りついて消えていかない。

 何度も繰り返し聞こえてくる。

『あなたより、同じ医師の私の方が彼に相応しいわ』

 こうしてショックを受けているのは、彼女の言う通り引け目を感じているからだと自分でもわかっている。

 私は、これから先ずっとこんな思いを抱いていかなくてはならないのだろうか。

 それはいつも胸の中に、細かい波がざわざわと立っているような、決して穏やかではない状態だ。

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