溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る
五十嵐さんが立ち去って十分もしないうちに、会場からは続々と人が出てくる。
待っていると、雑談をしながら出てきた集団の中に晃汰さんを見つけた。
そこには、さっきの五十嵐さんの姿もある。
ドクター集団を遠目から眺めていると、なんだか晃汰さんが急に知らない人のように感じた。
これまで、秘書としてこういう場面でそんな感情を抱いたことはない。
きっと彼と結婚し、私が晃汰さんに特別な感情を抱くようになってしまったからだ。
晃汰さんが集団から抜け、私の方へと歩いてくる。そのとなりにはなぜだか五十嵐さんも一緒だ。
「お疲れ様でした」
いつも通り頭を下げる。
しかし、目の前まで来たふたりを見たくなくて、このまま顔を上げたくないと一瞬思ってしまった。
「お疲れ。小野寺、紹介しておく。アメリカにいた時に一緒に仕事をしていた五十嵐だ」
「五十嵐澪です。水瀬君には大変お世話になっていたので、秘書さんにもご挨拶をと思いまして」
今少し前にふたりきりで話したというのに、五十嵐さんはあたかも初めてのような挨拶をする。
嫌な感じを受けたけれど、ここは大人の対応を取ろうと頭を下げた。