溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る


「こちらこそ、いつも水瀬が大変お世話になっております」


 相手がそのつもりなら、私も同じように返すまでの話。私の挨拶に五十嵐さんは、にこりと感じのいい笑みを浮かべた。


「ご結婚されたとのこともうかがいました。おめでとうございます」

「ありがとうございます」


 自分の方が相応しいとまで私に言ったのに、祝福の言葉をかけられ戸惑いが隠せない。


「ちょっと、結婚したのに旧姓で呼んでるの? 愛を感じないんだけど」

「仕事中なんだから当たり前だろう」

「えー、うっかり間違えたりしないの?」

「しません」

「相変わらずお堅いな。奥さんに愛想つかされちゃうよ?」


 目の前で繰り広げられる仲の良さそうな会話。

 耳を塞ぎたくなるけど、平静を装い黙って見守る。

 でも、内心は平然とはしていられず、胸がざわざわとしていた。


「じゃあ、またね。例の症例の件は改めて連絡するから」


 五十嵐さんはひらりと手を振り颯爽とその場を立ち去っていく。

 ドクターで、ああいう綺麗な人が晃汰さんと並んで見劣りしないんだろうな……。

 離れていく彼女の自信に満ちた背中を目に、そんなことを思っていた。

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