溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る


「千尋、今日は普段と雰囲気違うな」


 父親が私を見て普段は言わないようなことを口にする。

 今日はお見合いの席ということで、私も普段とは違う華やかな正装に身を包んでいる。

 クリーム色のAラインワンピーススーツ。仕事の日は常にまとめている髪も、今日は下ろしてハーフアップにして巻いている。


「うん、綺麗よ。すごくいいわ」


 母親にも好印象なら、お見合いの席では間違いないだろう。


「千尋、本当に見合いをしてくれるのか?」


 父親は会って早々神妙な面持ちでそんなことを訊いてくる。
 この縁談が、自分の会社の命運を決めるかもしれないこと。それを、娘に託そうとしていることが心苦しいのかもしれない。


「うん、するよ。自分で決めたことだから、大丈夫」


 そうはっきり答えると、父親は「そうか」と弱弱しく笑みを浮かべた。

 そのやり取りを横で見ていた母親が「じゃ、行きましょう」と声をかける。

 両親に連れられ向かったのは、ホテル内の日本料理専門店。

 入り口で父親が「小野寺です」と名乗ると、着物のスタッフが「ご案内します」と奥へ先導していく。

 個室の客席が並ぶ石畳みの通路を進み、そのひとつの前で「こちらになります」と案内した。


「ちい、いい? 入るわよ」


 母親が確認を取るように私を振り返り、襖に手をかける。

 扉をすっと開ければ、中には三人の人影がすでに私たちの到達を待っていた。

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