溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る
メイクが崩れていないかだけ確認をし、レストルームをあとにする。
これからロビーラウンジでもう少しお茶でもしようかと話していたから、まだすぐには帰れなそうだ。
「小野寺?」
レストルームから元の料亭に戻ろうとホテル内を歩いていたところ、後方から突然名指しで呼び止められる。
よく知る声に振り返ると、そこにはスーツ姿の水瀬院長が立っていた。
「院長……どうしたんですか、こんなところで」
今日は病院も休診日。外来診療がなくても病棟に出ていることも多い水瀬院長だけど、今日は完全オフと把握している。
となると、ここには私同様プライベートということだ。
「俺は付き合いの用事だ」
「そうでしたか。私も、院長と同じで、今日は──」
向き合って話していたところ、向こうから「千尋!」と母親から呼びかけられる。
絶妙なタイミングで向こうから両親と小室さん一家がやってくるのが目に入り、この状況をどうしたらいいのかわからず水瀬院長を見上げた。
「あ……実は、今日、私お見合いで」
「見合い?」
そうこうしているうちに母親がすぐ、目の前まで来て水瀬院長に頭を下げる。そして、私に小声で「お知り合い?」と訊いた。