溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る
「そんなことは……」
「ある」
身体を屈めた晃汰さんに、後ろから腕を回して抱きしめられる。
ふわりと爽やかな香りが鼻を掠めた。
仕事の時は決してつけることがない香水。オフの時に気分でつけているというのは結婚してから知った。
私が妊娠してからは体調を気遣って使っていなかったけれど、晃汰さんの纏うこの香りが私は好きで、妊婦の今も気分が悪くなることはない。
「あまり長時間外にいるつもりもないが、ちゃんと温かくして」
「はい。わかりました」
こめかみに口づけを落とし、晃汰さんは部屋を出ていく。
トクトク音を立て始めた鼓動を落ち着かせて、支度を終えて部屋の明かりを消した。