溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る


 十一月半ばから始まった赤レンガ倉庫のウィンターイルミネーションは、本場ドイツのクリスマスマーケットを思わせる温かみのある雰囲気が漂う。

 訪れた人たちは温かいグリューワインやソーセージなどを片手に楽しみ、本当に現地を訪れているような景観が広がっている。

 そんな景色を目にしながら、近付いてきた聳え立つ巨大なツリーを見上げた。

 大きなもみの木がオレンジ色の細かな光に包まれ、幻想的な光景に視線が奪われる。いつまでも見ていられるくらい美しい。


「綺麗……」


 ぽつりと呟くと、晃汰さんは横から私の肩を抱く。


「毎年、このくらいの時期になるとあまり外には出たくないなって思っていて」

「どうして?」

「なんとなく、イルミネーションの時期になるとひとりで寂しいじゃないですか。どうしても、カップルとか目についちゃいますし」


 クリスマスの時期はひとりでいると普段より孤独を感じやすい。目につく人たちが寄り添って楽しそうにしているからだ。

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