溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る


「お母さん? えっ……ちょっと、どうしたのお母さん」


 目の前で小さくなった母親を前に、血の気が引く。

 明らかに具合が悪くなっている母親を目の前に、その場に膝をつき寄り添う。


「小野寺、一一九番」

「えっ、あ、はい!」


 動揺する私の横から指示が飛ぶ。

 水瀬院長が私の横に腰を落とし、母親に「小野寺さん、楽な姿勢を取りましょう」と声をかけた。

 その様子を横目に、慌ててバッグからスマートフォンを取り出す。動揺しすぎて手からスマートフォンを落とし、床に転がした私にもう一度「小野寺」と水瀬先生の落ち着いた声がかけられた。


「落ち着いて」

「は、はい!」


 一一九番に電話をし、救急車を要請している間に、父親や小室さん家族も駆け寄って集まる。


「母さん! 千穂!」


 飛んできた父親が私よりも動揺を露わにし、母親の名前を呼びながら横に膝をつく。


「小野寺さん、大丈夫ですからね。すぐに救急車が来ますから、深呼吸できますか。できそうならお願いします」


 水瀬院長だけがその場で冷静に母親に声をかける。

 ホテル内での急病人に、周囲にも心配した人が集まってきていた。

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