溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る
「母は……母は助かるのでしょうか」
知らぬ間に声が震えてくる。
見上げる水瀬院長の表情が、勝手に浮かび上がってきた涙のせいで揺れる。
「すみません……私」
母親が目の前で倒れて、平静なんか装えない。
怖くて、不安で、どうしようもない気持ちに押し潰されかけている。
指先で涙がこぼれ落ちないように抑える。
そんなどうしようもない状態の私に、水瀬院長はひと言「大丈夫だ」とはっきり口にした。そして、ふっと笑う。
「そんな、世界の終わりみたいな顔するな。俺を誰だと思ってるんだ?」
不安に押し潰されかけた私に、敢えて冗談を言うような口調で問いかける。
水瀬院長らしい頼もしい言葉に、我慢しきれなかった涙が一筋流れ落ちた。
「よろしく、お願いします」
深く頭を下げ、母親の執刀をお願いする。
水瀬院長は通りすがりに私の頭をポンと撫で、足早にカウンセリングルームを出ていった。