溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る


 明日から三月。

 寒かった季節もやっと終わり、これから春を迎える準備に入る三月。

 まだ十分に寒いけれど、日に日に優しく暖かい日差しを感じる日も増えてくるこの時期が、私は結構好きだ。

 終業時刻の迫る十七時過ぎ。

 私は自分の控え室で、バッグにしまっておいた白い封筒を取り出した。

 その上に自分で書いた〝退職願〟の文字を目に小さく息をつく。

 人生初めて、退職願を書いた。

 今日はこれを、水瀬院長に提出して帰るつもりだ。

 退職を希望する場合、だいたい一カ月ほど前に申し出るのが礼儀。三月いっぱいで退職したいなら、今がその時期だ。

 寿退社……とはまだ言い難いけれど、それに近い理由での退職。これから結婚に向けて歩んでいくために、仕事は辞めることに決めた。

 お見合いをした小室さんには、こちらからはぜひ縁談を進めていただきたいと返事をした。あちらも同じ考えでいたそうで、婚約することで話は進んでいる。

 ただ、母親が倒れたこともあり、体のほうが落ち着いてからで構わないと気遣いの言葉をもらっている。

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