溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る
「ここにシングルのベッドがあって、その前に雲の形をした小さなラグを敷いてました。ローテーブルがここで……」
部屋の雰囲気を説明し始めると、晃汰さんは黙ってそれを聞いてくれる。
「あと、対面したこっちに小さなデスクを置いて、仕事だったり、そこでメイクしたり、お茶したり……」
秘書を始める頃に引っ越してきて、ずっとお世話になってきた部屋。
疲れた日に帰宅してホッとしたり、休みの日は好きなことをして一日まったり引きこもったりもした大切な空間。
急な引っ越しで慌ただしく、感傷に浸る暇もなかったけれど、今になって名残惜しい気持ちが押し寄せる。
「寂しいか」
「えっ……?」
内心しんみりしていたのに気付いたのか、晃汰さんが静かに問いかける。
見上げた先にあった顔がどこか優しく穏やかで、素直に「はい」と頷き答えた。
「これまでお世話になった場所だから、やっぱり少し寂しいですね」
「それは、なんとなくわかるよ。俺も向こうに住んでいた頃、日本に帰るのに部屋を引き払う時少しそんな気分を味わった」
「院長も……?」
「ああ。って……今」