溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る
晃汰さんの表情は急にどこか不満げに見える。
一体なにを言っているのだろうとジッと綺麗な顔を見つめていると、その距離が一気に縮まった。そして──。
目の前に影が落ち、傾いた顔が近付く。気付いた時には唇が触れ合っていて、またも目を開いたままそれを受け止めていた。
そこでやっと、二回と言われた意味がわかる。
きっとこの数時間の間で、自分でも気付かぬうちに〝院長〟と呼んでいたに違いない。
「院長っ、あっ!」
勢い余ってまた〝院長〟と口にしてしまい、ハッとする。
晃汰さんは意地悪くにやりと笑って、私の顎に手をかけた。
「おいおい、わざとなのか?」
「ち、違います!」
「どうだかな。まぁ、俺は構わない」
私の手にある玉子を溶いていた菜箸を取り上げ、晃汰さんはキッチン台に置く。
そのまま腰に手を回され引き寄せられた。
「っ……!」
急に距離を詰められ、驚いてカッと目を見開く。
そんな私とは対照的に、晃汰さんは余裕の表情で微笑を浮かべる。
「こうやってキスを迫られたら、目は瞑るものだと思うけど」
「そ、そうかもしれませんが、しかし、私には難しいといいますか、あの」