冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする
第三章:私の旦那様

真実



「やっぱり沖縄は気持ちいいわねぇ~!」

現在時刻、十六時半――那覇空港でタクシーに乗り込み、先輩クルーとステイ先のホテルへと向かっている。
窓を開け放ち温かい風を感じていると、突然睡魔が襲ってきた。

「ふあぁ」

昨晩、駆さんとキスをしてあれやこれやと考えていたら、超寝不足だ。
フライト中も、何度落ちかけたか分からない。
私のあくびを見た先輩たちは、クスクスと笑い声をあげる。

「ホテルに入ったら爆睡確定ね」
「っ、そうかもしれません」

恥ずかしくなって再び込み上げてきたあくびを無理やり押さえる。

(駆さん、今頃お家かな)

窓の向こうの穏やかな海を見ながら、今朝の出来事を思い出していた。

遡ること――半日前。
今日のフライトのために身支度をしていた私は、彼と洗面所に鉢合わせた。

『お、おはようございます!』
『おはよう』

ふとカレンダーに書いてあった駆さんの予定を思い出す。
確か今日は、自宅で待機――スタンバイの日だったはずだ。
二人に漂う空気は案の定、よそよそしい。
彼の顔を見るのも恥ずかしくてそそくさとその場を立ち去ろうとすると、すかさず腕を掴まれた。

『⁉』
『安奈、帰ったら話したいことがある』

振り返ると、彼は真剣な目で私を見つめていた。
話したいこととは昨晩のことだろう。
明日の午後には自宅に戻る予定だし、駆さんもオフで自宅にいるはずだ。

『分かりました。私もお話が』
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