冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする

「は……はは……」

（ついにミッションが始まる）

うちの実家へ挨拶に行った時は、五十嵐さんというハイスぺ男子が私と結婚するというだけでお祭り騒ぎでノリとテンションだけでその場を乗り切れた。
しかし、今回はちゃんとしたお家柄のご挨拶だ。
彼に渡された台本通りに、ミスなく事を進めなくてはウソがばれるだろう。

五十嵐さんにアイコンタクトを送ると、彼は私に微笑みかけたのちお義父さんを見た。

「もちろん、なんでも聞いてくれ。結婚を前提に交際を始めたのは一年前だ。な、安奈？」

「はい。シフトが立て続けに被ることがあって……サンフランシスコで食事へ行き仲良くなりました」

実際に彼とは、この四年間まともに食事をしたことはない。
契約を結んだ時と、年間スケジュールの打ち合わせ兼、台本読みの時に二度カフェで顔を合わせただけ。
その際もとても事務的で、仕事のようだった。これからの同居生活がいっそう不安になったのは言うまでもない。

つらつらと嘘を並べる私たちを、みなさんは温かい目で見守ってくれている。

「――たくさん教えてくれてありがとう。じゃあそろそろ小腹もへってきた頃よね。ケーキを用意するわ」