冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする

お義母さんが席から立ち上がってすぐに私も続く。
彼女は気にしないでと言ってくれたけれど、「お義母さんとふたりでお話がしたいので」と言って押し切る。

背後から視線を感じたけれど、気にしない気にしない。

(別に手伝うくらいいいでしょ)

仮夫婦と言えど、五十嵐家とはこれから何度も顔を合わせることになるのだ。
仲良くなっていて損はないだろう。

お義母さんと一緒に大理石のキッチンの上でカットケーキをお皿に盛りつけて、コーヒーを淹れる。
彼女は柔らかい雰囲気で口調も優しい。
私が話すことにもよく笑ってくれるから、まだ出会ったばかりだけれどかなり打ち解けられてるような気がする。

「正直ねぇ……伊織がパイロットを目指すって言い出した時は、頭を抱えたわ。本当はふたりのどちらかに会社を継いでもらいたかったからね」

お義母さんはコーヒーを注ぎ終わると本音を漏らす。
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