冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする

「そうですよね、五十嵐製薬といったら日本有数の大企業ですし……」

婚約するまで知らなかったけれど、ふたりは正真正銘の御曹司だったのだ。
普通に暮らしていたら大企業の社長、もしくは重役には就いていただろう。
その安定した未来を捨て、パイロットを目指すなんて。
なれたとしてもキャリアを歩む中で、日々努力と忍耐を要される過酷な職だ。ふたりとも相当強い信念があるに違いない。
するとお義母さんは、私にいたずらっぽく笑いかけた。

「駆と伊織は年も近いし、昔からライバルみたいな感じなのよ。ことあるごとにいつも競い合ってたわ。伊織がパイロットになったのも、駆を超えたいのが一番の理由なんじゃないかと思ってね」

「え……」

意外過ぎて言葉が出なかった。
五十嵐さんは冷静沈着だし、伊織さんは見るからに穏やかで争いごととは無縁そうなのに。

「じゃあ私、先にコーヒーをお持ちしますね」
「ありがとう」
< 40 / 145 >

この作品をシェア

pagetop