冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする

お盆にマグカップを乗せ、キッチンを出てすぐだった。

「ねぇ、駆は村瀬さんのどんなところが好きなの」
「ああ、それは私も聞きたい。こそっと教えてくれ」
「はぁ……？」

男性陣の話し声がふいに聞こえ、反射的に足を止める。
確か……お互いの好きなところに関しては、台本に記載があったはずだ。

（五十嵐さんは私の『明るい性格』と『気が利くところ』が好き、とかそういう設定だったっけ）

居心地の悪さを感じながら再び歩き出そうとしたその時。
ゴホンッと大きな咳払いがリビングに響いた。

「安奈の誠実な性格だな。彼女は仕事でもプライベートでも、思いやりと優しさを持って人と関わることができる。正直俺にはもったいないくらい出来た女性だ」

「っ⁉」

台本にはないセリフがサラリと飛び出して、カーッと体の熱が上がる。

（い、五十嵐さんなんでアドリブを……⁉）

すると「あっ」と私に気付いたような声が聞こえて、さらに鼓動が速まった。

「村瀬さん、もしかして今の話聞こえてた？」