素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる

16 帰り道

 さっき別れたリリアと食事をしたお店の前に佇む。近くに美味しいと評判のレストランが出来たから、行きたいねって前々から話していて、今夜はゴトフリーがちょうど夜に勤務が終わるから、仕事終わりに迎えに来てくれるように頼んでいたのだ。

 以前、ブレンダンが言ったことが蘇る。いずれ来てくれるであろう、その人を待つのはそう、何だか、楽しかった。そんな気持ちも、きっとゴトフリーと付き合い始めるまでは分からなかった事に違いない。

 お酒も飲んでいたから、外気の冷たさは気持ち良い。はあっと息をつくと、白い息が出た。

 じっと城へと繋がる道を見つめていると、遠くから待っていたその人が走ってくるのが見えて、アリスは思わず微笑んだ。

「……アリス! ごめん、遅くなった。ちょっと色々あって、団長の説教が長引いて……こんなにほっぺたが冷たくなってる。店の中で待っていたら良かったのに」

 走って来たばかりなのに、ゴトフリーは息も切らさない。その大きな両手でアリスの赤くなっている頬を包み込むと、顔を近づけた。今日も勤務中に書類を届けに来たから会ってはいるんだけど、やっぱり今また会えると嬉しい。にこっとはにかむと嬉しそうに彼も笑ってくれる。

「ううん、迎えに来てくれてありがとう。ゴトフリー。行こう?」

 そう言いながら歩き出すと、大きな手のひらと手を繋いだ。冷たくなっている自分の手を包み込むようにするとゴトフリーは優しく握った。
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