素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる
 どうやら城内のどこかで仕事だった竜騎士達が、移動中に騒ぎを聞きつけてこちらに来ていたらしい。その中に顔が赤くなっている彼氏を見つけたアリスは、あの人達にどこから聞かれて居たのだろうと思ってやっぱり自分も真っ赤になってしまった。

 もみくちゃにされて黒い集団からやっと押し出されたゴトフリーは、制服のスカートを握りしめ所在なく立っているアリスの元へとやってきた。

「アリス……あの、俺あれ聞いてまじで嬉しい。やばい。叫び出しそう」

 今の状況が恥ずかしくて潤んだ目で自分を見上げるアリスを愛しげに見つめると、ゆっくり抱きしめた。ほっと息をついて、その大きな胸に顔を埋める。

 あの時から、ずっとずっとあの人に言いたかったのだ。この人は、ゴトフリーは私のものだから、二度と近づかないで欲しいとはっきりと言いたかった。その願いを意図せず叶えてしまうことになった。思いもよらぬ人たちに聞かれていて恥ずかしいけれど、どこかすっきりとした気持ちだった。

「おい、ゴトフリー、ここまで来たらキスくらいしろよ!」

 ナイジェルの声だ。仲の良いゴトフリーを完全にからかっている。その言葉が聞こえた途端に食堂に居る人たちからぱちぱちと拍手が集まり、和やかな祝福する雰囲気に包まれた。

 そうして、彼は顔を上げたアリスの額に優しいキスをくれた。
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