素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる

26 風邪

 その前の日から、もしかしたらこれはやばい兆候なんじゃないかという自覚はあった。やっとの思いで家に帰り夕食も食べずにベッドに倒れ込むと、体を丸くしてじっとしていた。その間にも強くなる関節痛はひどいし、頭がフラフラする。

 救いは体調が悪いので明日は休むかもしれないと帰り際に室長に伝えていたことだろうか。こんな状態で休みの連絡を伝えるために伝書屋まで行けない。もしかしたら、かなり熱が出ているのかもしれない。寒気はすごいしとにかく体が動かせない。

 一人暮らしだと自分自身が病気になってしまうと、それこそ何にも出来なくなってしまう。喉が乾いて水を汲みに行く時と、どうしようもないトイレ以外はもう動く気力がしなくてアリスはただただベッドの中で寝ている以外出来なかった。

 ぐったりして寝ていると、カタンと部屋の中でかすかに音がしたみたいでうっすらと目を開く。居間にしか灯りをつけていないので薄灯りの中、心配そうに顔を覗き込んでいるのは、彼氏のゴトフリーだ。

「ん、アリス起きた?」
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