素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる
 仕事帰りにそのまま来てくれたのか、通勤用の服を着ている。この前渡したばかりの合鍵を使ったのだろう。そっとアリスの額に大きな手を乗せると、思ったよりも高い熱を悟った彼は顔を顰めた。

「……ゴトフリー?なんで?」

「サハラ室長から風邪で休んでるって聞いたんだ。薬屋でよく効く風邪薬を買ったし、ご飯の買い物もある程度して来たから、おかゆも作ってあげる、食欲はどう?」

 彼が料理が得意なのはわかっているし、きっと食べたら美味しいと頭では理解しているけれど、今は何も食べる気がしない。喉が痛んでやっとの思いで出したかすれた声でアリスは答えた。

「食べたくないの……」

 ちいさな子供のようなことを言ったアリスの頭を優しく撫でて、ゴトフリーは笑った。

「ちょっとだけ食べて、薬飲んでからまた寝たら良いよ。今作るから、待ってて」

 そう言うと彼は手早くおかゆを作ってくれた。手を動かすのも億劫になっているアリスの代わりに甲斐甲斐しくスプーンを使って口にまで運んでくれる。
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