素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる
「そうだよ。アリス、捕まった時に心の中でアレックのこと呼んだだろう? あの時、アレックがひどく動揺して、力の加減せずに俺のことを呼んだから、竜舎中の竜が自分の竜騎士に緊急事態を伝えたんだ。流石に勤番の竜騎士は城からは動けなかったんだけど、非番で動ける全員が今一緒に来てくれたんだよ。とにかく使われていない古い教会ということしかわからなかったから、地図中のそんな建物を皆でしらみつぶしに当たったんだ。さっきのリカルドが人の気配のする廃墟の教会を見つけてくれて、すぐに俺を呼んでくれたんだ……とにかく、見つけられて良かった……」

 かすれた声でそう言ってアリスをぎゅっと抱きしめた。

 そのどこよりも安心出来る腕の中でゆっくりと空を見上げると、本当にすごい数の竜が空を飛んでいる。もちろんヴェリエフェンディで生まれ育ったから、竜が空を飛んでいるのを見るのは日常茶飯事だけれど、こんなに空を埋め尽くす程の竜を見たのは初めてだ。

「……すごい」

 先ほど生きるか死ぬかの間際に居たことも忘れてその光景に見入ってしまう。きらめく星が光る夜空を、属性の光を放つ竜の影が縦横無尽に飛んでいる。
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