社長は身代わり婚約者を溺愛する

第11話 本当の名前は

その日の朝は、やけに静かで。

信一郎さんの隣にいる事を、忘れてしまうかのようだった。


「うーん、芹香。」

裸のままの信一郎さんが、私の身体に絡まってくる。

その温もりが、私を幸せにした。

「信一郎さん、おはよう。」

「おはよう、芹香。」

まだ眠い目を擦っている信一郎さんは、とても可愛らしく見える。


「私、朝食作るね。」

起き上がると、信一郎さんに借りたTシャツのまま、私は顔を洗った。

信一郎さんの部屋で目覚めるのも、何だかくすぐったい。

小さな欠伸をしながら、キッチンに向かうと、冷蔵庫の中には卵とハムが置いてあった。

「この卵とハム、使っていいですか?」

「いいよ。」

よく見ると、ハムは超高級品だ。

「これ、誰かから貰ったの?」

「ん?自分で買った。」

流石。社長はいい物を食べている。

朝から超高級ハムだなんて、私もラッキーだ。
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