社長は身代わり婚約者を溺愛する
私はハムと卵焼きを作ると、テーブルに置いた。

「さあ、召し上がれ。」

「いただきまーす。」

信一郎さんは、パクパクと大きな口で、食べ始めた。


「芹香、料理上手いな。」

「大げさだよ。ただ焼いただけなのに。」

「でも、塩加減が抜群だよ。」

普通に褒めてくれる信一郎さんが、愛おしくなる。


「そうだ。芹香に話があるんだ。」

「なあに?」

私は自分が作った卵焼きを食べた。

うん、まあまあの味付け。

「芹香のお父さんに、挨拶したいんだよ。」

「また、その話?」

信一郎さんは、ちょっとムッとしている。

「この際だから、芹香と結婚を前提に、付き合っている事を報告したいんだよ。」

「だから、父はそんな事、気にしないタイプだって。」

「それがさ。お父さんが経済界で、言ってたらしいんだ。『娘には、俺がきちんとした婿を取らせる。』って。」

「えっ……」

芹香のお父さん、婿を取る気、満々じゃん!

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