社長は身代わり婚約者を溺愛する
そして私は、服に着替えると、荷物を持った。

「こんなに早く、家を出るの?」

「ううん。会社に行く前に、服を着替えなきゃ。」

すると信一郎さんは、私の髪をさらりと触った。

「今度、俺の部屋に着替えを置いておけばいいよ。」

胸がキュンとした。

そんなの、半同棲みたいじゃない!

「う、うん。」

声が上ずってしまった!変に思われないかな。


「じゃあ、行ってらっしゃい。」

「行って来ます。」

私は信一郎さんに手を振ると、マンションを出た。

近くでタクシーを捕まえ、自宅に行く。

早くしないと、遅刻しちゃう。

自宅に着いたのは、それから10分後だった。


玄関のドアを開けると、そっと階段に向かった。

「お帰り。遅かったな。」

身体が飛び上がる程、驚きながら振り返ると、そこにはお父さんがいた。

「お父さん……」

「どこに行ってた?」

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