社長は身代わり婚約者を溺愛する
信一郎さんが、社長だから?

そうじゃない。

信一郎さんが、御曹司のお金持ちだから?

それとも違う。

私が惹かれたのは……


誰よりも温かい笑顔を持った人だったから。

思い出す。

会った瞬間に見せてくれた、あの温かい笑顔を。


「笑顔。」

「笑顔?」

「信一郎さん、誰よりも温かい笑顔で、私を迎えてくれたから。」

今までは、私の事を笑顔で迎えてくれた人なんて、いなかった。

私に媚び売っても、何の価値もなかったから。


「たったそれだけで、俺を?」

信一郎さん、泣いている。

「こんな俺を、愛してくれたなんて。馬鹿だな。」

「馬鹿じゃないよ。十分過ぎる理由だって思ってる。」

信一郎さんは、私の頭を撫でてくれた。

「礼奈。礼奈。何度呼んでも、呼び足りない。」

「信一郎さん……」


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