社長は身代わり婚約者を溺愛する
だんだん、信一郎さんの声が聞こえなくなる。

私、どうなってしまうの?

「礼奈!」

信一郎さんの叫び声が聞こえた後に、私は気を失った。


ああ、私。もう信一郎さんと一緒にいる事ができないんだ。

その思いが、私を奈落の外に落としていく。


ウソでもよかった。

芹香の代わりでもよかった。

信一郎さんと一緒にいれたら、それだけで私はよかった。


「信一郎さん……」

頬に涙が伝って、私は目が覚めた。

側にいる人を確認すると、そこには下沢さんがいた。

「下沢さん?」

「ああ、起きた?」

下沢さんは、スマホを見るのを止めた。

「気分はどう?」

「どうって……何で下沢さんがここにいるの?」

下沢さんは、申し訳なさそうに答えた。

「社長が、ここにいてやってくれって。」

信一郎さん。

今、ここにいるのが、信一郎さんじゃなくて、悲しいよ。
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