社長は身代わり婚約者を溺愛する
「ふっ……」

私の頬に涙が流れる。

「ごめん。社長じゃなくて。」

そんな事言われても、私は何とも言えない。


「きっと、社長も仕事に忙しいんだよ。」

下沢さんは、私に気を遣っている。

「だから、仕事が終わったら、また会いにくるって。」

「たぶん……来ないと思う。」

私は、泣きながらそう言った。


「振られたんだ。私。」

次から次へと、涙が零れる。

「信一郎さんが求めているのは、私じゃなかった。」

「信一郎さんって……そんな深い仲だったのかよ。」

私は、うんと頷いた。

「運命の人だと思っていた。結婚したいって、初めて思った人だった。」

「社長は?社長は、それを知っているのかよ。」

「知ってる。」

伝えたもの。

私が、どれだけ信一郎さんの事を好きなのか、愛しているのか、伝えたもの。

「だったら、社長って冷たい人だな。」

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