社長は身代わり婚約者を溺愛する
私は泣きながら、下沢さんの方を見た。

「俺だったら、森井さんが嘘ついてたとしても、愛しているなら許すよ。」

下沢さんは悔しそうに言った。

「下沢さん?」

「俺、聞いちゃったんだ。森井さんが、社長に嘘ついてたって話。」

私は下沢さんに背中を向けた。

「聞いちゃったんだ。」

「でもそれって、社長に嫌われたくないからでしょ。」

「そうだよ。」

「だったら、許せるはずだよ。本当に愛してるんだったら。」

その言葉が、私の胸に刺さる。

「信一郎さんは、愛してるって言ってくれたけれど、本当は違ったんだよ。」

「なんで?」

「芹香じゃないと……沢井のお嬢さんじゃないと、結婚できないって言われた。」


そうだよ。私が最初に考えたのと同じ。

信一郎さんは、私じゃない。

”沢井のお嬢様”だから愛してるって言ったんだ。


「だとしたら、俺は社長を卑下するね。」

下沢さんは、どうして私の味方になってくれるんだろう。

「愛してるって、身分で決める物じゃないよ。」

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