社長は身代わり婚約者を溺愛する
頼んだコーヒーもまだ来ない。

私は、頬杖をついてため息交じりに伝えた。

「別れたの。」

「えっ⁉上手くいってたんじゃなかったの?」

どうやら、芹香の中ではそう思っていたらしい。

「私が、芹香じゃなくて、礼奈だってバレて。」

「それが、関係あるの?」

芹香、下沢さんと同じような事言ってる。

「要するに、沢井家のお嬢様じゃないと、ダメだって事。」

私は芹香をちらっと見た。

芹香は、うつむきながら考えている。

「……それって、ただ家柄で人を見ているって事?」

「そうだね。」

信一郎さんがそんな人じゃないって事は解っている。

「信一郎さんだって、家を裏切れないんだよ。」

「それにしても、礼奈の事、気に入ってたんだよね。」

「うん、まあ……」

あんなに、愛してるって言われたし。

「だったら、家柄よりも礼奈の事、取るべきだよ。」

私は、はぁーとため息をついた。

「芹香も同じ意見か。」

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