社長は身代わり婚約者を溺愛する
「礼奈。いいんだ。」

信一郎さんが、私の肩を掴む。

「それに俺は、無駄な投資をしようなんて、思ってない。」

「だって、ここは……」

「調べさせてもらったが、この工場は設備がいい。もっといい物を作れば、もっと売れる。」

「でも、そんな資金なんて……」

「だから、俺が援助するんだろ。」


信一郎さんのあまりの優しさに、涙がほろりと出た。

「泣くな、礼奈。」

信一郎さんが、私を抱きしめる。

「俺は、礼奈が好きだ。幸せにしたい。礼奈のご両親にもそうなって欲しい。」

「信一郎さん……」

今、信一郎さんに出会って、本当によかったって、心の底から思っているよ。


「信一郎君。」

「はい。」

お父さんは、書類を折りたたんだ。

「一度、考えさせて貰うよ。」

「はい。良い返事をお待ちしてます。」

信一郎さんは、にこりと笑った。

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