社長は身代わり婚約者を溺愛する
「違うよ。」

言葉って、難しいなって思った。

「信一郎さんの方に見返りがないのは、おかしいんじゃないかって。」

『俺達の方に?』

信一郎さんは、困っている感じがした。

『そんなの初めて聞いた。他の人は、融資だけを望んでいたのに。』


その時、自分のお父さんが、誇らしく思えた。

両方得する関係。

お父さんは、それを望んでいるのだ。

『もう一度、考え直すよ。』

「分かった。」

私は電話を切った。


「信一郎さん、考え直すって。」

「おう、よかった。」

居間にデンと構えて座っているお父さん。

何だか、今までと違う見え方をした。

「信一郎さん、驚いてたよ。」

「何をだ?」

「今までの人は、お金さえ出せばそれでよかったのにって。」

「はっ!そう言う奴らは、簡単に人を裏切るさ。」

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