社長は身代わり婚約者を溺愛する
お父さん、情に厚いんだね。

「いい取引先になるといいね。」

「そうだな。」

私は、お父さんが誇らしく思えた。


しばらくして、信一郎さんがまた工場にやってきた。

「やあ。」

信一郎さんが、家に来るなんて、ちょっと嬉しい。

「お父さん、いる?」

「うん。工場にいるよ。入ってみる?」

「うん。邪魔でなければ。」

信一郎さん、嫌がる気配もない。

やっぱり、この人を選んでよかった。


そして私は、信一郎さんを工場に連れて来た。

「お父さん、信一郎さんが来たよ。」

「おう。」

お父さんは、仕事の手を止めると、信一郎さんと私の元に来てくれた。

「すまんね。こんなむさ苦しいところに。」

「いえ。俺、こういう場所、実は好きなんですよ。」

そう言ってくれる信一郎さんが、たまらなく好きだ。

「今日は、修正案をお持ちしました。」
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