社長は身代わり婚約者を溺愛する
「ああ、じゃあこっちに来て貰おうか。」

お父さんは、信一郎さんを奥のテーブルと椅子がある場所に、移動させた。

もちろん、私も付いて行く。

「修正案と言うのは?」

「はい。こちらです。」

信一郎さんは、バインダーに閉じてある書類を、お父さんに渡した。

「随分、厚いんだな。」

「はい。いくつか案を持って来ております。」


お父さんは、全ての書類に目を通した。

そして、最終ページを見終わった後、うんと頷いた。

「どれも、素晴らしい案だった。」

「本当ですか。よかった。」

信一郎さん、ほっとしている。

よかった。お父さんが気に入ってくれて。


「その中でも、日本一の絹糸を使ったタオル。これが、特に素晴らしいと思った。」

「はい。こちらの絹糸は、コンテストでも優勝した程の実力があります。」

「そうか。俺は一度、絹糸を使ってタオルを作ってみたかったんだ。」

「では、こちらの案で行きましょう。融資は任せて下さい。」

そして、お父さんと信一郎さんが、立ち上がって握手をした。

「よかったね、お父さん。」

「ああ。信一郎君のおかげだ。」

お父さんも、信一郎さんの事、気に入ったみたい。
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