社長は身代わり婚約者を溺愛する
「では、早速先方に話をつけます。」

「お願いするよ、信一郎君。」

信一郎さんは、頭を下げてお父さんの元から離れた。


「もう、行っちゃうの?」

私も信一郎さんに、ついて行った。

「礼奈と少しゆっくりしたいけれど、仕事は、スピードが大切だからね。」

「そっか。」

又会えたと思ったのに、もう帰っちゃうのか。

「礼奈。」

信一郎さんは、工場を出たところで、私を抱き寄せた。

「今度ゆっくり会えるように、時間取るよ。」

「うん。」

この時間が、すごく好き。

信一郎さんに、包まれているような気がして。


「今日は、本当に有難う。」

私からも信一郎さんにお礼を言う。

「お父さんにも、気に入って貰ったし。よかったよ。」

「うん。」

信一郎さんが笑顔になると、何故か切なくなった。

「信一郎さん。本当に、本当に有難う。」

「礼奈……」

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