社長は身代わり婚約者を溺愛する
「私、私ね……」

急に涙が込み上げてきた。

「信一郎さんと出会って、よかった。」


あの日、芹香のお願いを断って、お見合いの席に行かなければ、信一郎さんと出会う事はなかった。

信一郎さんと出会えたから、今の私がある。


「俺もだよ、礼奈。」

信一郎さんは、私の額にキスしてくれた。

本当に、私は幸せだと思う。

「じゃあ、また今度。」

「うん。」

信一郎さんと離れるのは寂しいけれど、お仕事もして貰わないと、工場も立ち直れない。

「お仕事、頑張って。」

「おう!」

信一郎さんは、私に手を挙げて、車に乗り込んだ。

離れるのは、あっけない。

あっという間に、信一郎さんの車は見えなくなった。


「今度は、いつ会えるんだか。」

今すぐ会いたい気持ちを抑えて、私は家に戻った。
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