社長は身代わり婚約者を溺愛する
芹香の言葉に、カーっとなった。

「おかしい?」

「別に。好きな人と結婚したいと思うのは、普通の事じゃん。」

芹香は、おつまみで足らないらしく、ビール3杯目を注文した。

「でも不思議だよね。礼奈が私の代わりにお見合いに行ってくれたから、二人は出会ったんだものね。」

「ふふふ。」

そう思うと、私も不思議に思えてくる。

「もし、私がそのままお見合いに行ってたら、礼奈と黒崎さん、交際する事はなかったんでしょ。」

「そうだよね。」


運命は、不思議な巡り合わせを、与えてくれる。

「あーあ。黒崎さん、相手が私でも、交際したのかな。」

その瞬間、胸がズキッとした。

「……そうかもしれない。」

だって、あの時信一郎さんが求めていたのは、沢井のお嬢様だったから。

「やだ、礼奈。そんな事ある訳ないでしょ。」

「そうかな。」

「礼奈だから、付き合った。それでいいじゃない。」

生ビールを飲む芹香は、そう言って私を励ましてくれた。


有難う、芹香。

私、芹香の友人でよかったと思うよ。

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