社長は身代わり婚約者を溺愛する
「それって、援助するって事?」

「そう。それが、1億だなんて。」

芹香は、泣きそうな顔をしていた。

「もしかして、お父さんの会社、経営が危ないのかな。」

「沢井薬品が⁉」

沢井薬品って言ったら、薬関係では大手のはず。

「薬って、開発するにも相当なお金がかかるのよ。」

「うん、知ってる。」

「でも、それも元が取れないと、新しい開発費も出ないって。」

私は、何て言ってあげたらいいか、考えていた。


「逆って事は、ないかな。」

「逆って?」

「……信一郎さんの会社が、1億を貰うとか。」

芹香は、頭を横に振った。

「そんなの、黒崎さんの会社にはあり得ない。」

「どうして?」

「そんなにお金に困っている家と、お父さんは結婚を考えないもの。」

あの、お金に執着している芹香のお父さんだったら、考えられる。

「それに、本当に1億困っていたら、この結婚を、黒崎さんが断る訳ないでしょ。」

胸がズキッとした。

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