社長は身代わり婚約者を溺愛する
「それって、私はお金に勝てないって事?」

芹香は、涙を拭いた。

「愛だけじゃ、上手くいかない時だって、あると思う。」


お金を持っていない私と、産まれた時からお金持ちの芹香。

そこには、拭えない溝がある。


「愛は、全てを超えられるよ。」

「それは、理想論。」

そして私と芹香は、平行線。

「だったら、私はその理想論を証明してみせるよ。」

私は立ち上がり、お店を出た。


芹香には分からない。

私には何もない。

お金も地位も、美貌も。

だから、信一郎さんとの愛だけが、私の支えなの。


その時、目の前に車が停まった。

随分、高級な車だ。

そして、車のドアが開いて、中から出て来たのは……

「礼奈。」

「信一郎さん。」

こんな場所で、信一郎さんに会えるなんて。
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