社長は身代わり婚約者を溺愛する

第20話 ライバルね

「いいだろう。こちらに来なさい。」

私は芹香の側を通って、客間に入った。

「ここに座って。」

「失礼します。」

客間は和室だった。

大きいテーブルがあって、その前に正座した。


芹香もいつの間にか付いて来ていて、近くに座っている。

「それで?信一郎君の話とは?」

「芹香さんの事もです。どうか、二人の気持ちを聞いてあげてください。」

「二人の気持ちを聞いて、どうしろというんだ。」

まるで、二人の意見なんか、この結婚に関係ないと言わんばかり。

「信一郎さんも、芹香も。この結婚を望んでいません。」

芹香のお父さんは、ため息をついた。

「芹香、どうなんだ?」

芹香は、静かにこう答えた。

「私は、信一郎さんと結婚しても、いいと思っています。」

「嘘っ!」

私は、芹香を見つめた。

「……本当の芹香は、親の決めた人生なんて、歩まない。」

「それは、ほんの少し前までの私よ。」

芹香は、人が変わったようだ。
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