社長は身代わり婚約者を溺愛する
「芹香、どうしてそんなに、信一郎さんにこだわるの?」

「こだわる?それはこっちの台詞よ。」

「私が?」

私は自分を指さした。

「信一郎さんは、元はと言えば、私のお見合い相手よ。礼奈が、引くのが当然でしょ。」

もう芹香は、自分の道を失っている。


「じゃあ芹香は、意地でも信一郎さんと結婚するって事ね。」

「意地張ってるのは、礼奈じゃない。」

何を言っても、自分達が正しいの一点張り。

もう、芹香に何を言っても、ダメなのかもしれない。


「ごめんなさい。私、失礼する。」

立ち上がった私に、二人は何も言わない。

「芹香のお父さん。」

「何だね。」

「信一郎さんも、芹香も、この結婚が本意ではありません。もう一度、考え直して下さい。」

そう言って私は、芹香の家を出た。


暗い夜道、私の家に帰って来た。

「どうだった?」

お母さんが居間で、お茶を出してくれた。

「自分達が、正しいと思っているみたい。」
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