社長は身代わり婚約者を溺愛する
「あら。じゃあ、全くお話にならなかったの?」

「そう。」

私は、グビッとお茶を飲むと、ため息をついた。

「どうして、結婚したくない人同士、結婚させるんだろう。」

「うーん。お金が必要だから?」

「お金って言っても、支度金だよ?一度で終わるんだよ?」

私は、どうしても納得できなかった。

「信一郎さんと芹香を結婚させても、不幸な生活が待っているだけだよ。」

お母さんは、ニコッと微笑んだ。

「礼奈は、芹香ちゃんの事も、考えているのね。」


私が芹香の事を、考えている?

ふと、芹香の笑顔が、頭を過った。


「芹香はさ。自分が金持ちだって、自慢しないんだよね。」

「うんうん。」

「それに、いつも私の話聞いてくれるし。」

「そうね。」

「自分の意見を持っている、強い人なんだよ。」

何で、あんな事言われたのに、次から次へと、芹香のいいところが出てくるんだろう。


「いつか、芹香ちゃんも分かってくれるわよ。」

「いつかじゃ、遅いのよ。お母さん。」

私は、目に見えないタイムリミットを感じていた。

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