社長は身代わり婚約者を溺愛する
すると信一郎さんは、私を抱きしめた。

「礼奈。芹香さんは、取引先のお嬢さんだ。無下にはできない。」

「分かった。」

そして信一郎さんは、私から離れると、玄関のドアを開けた。

「黒崎さん。」

「こんにちは、芹香さん。」

まるで二人は、友達のよう。


「礼奈も久しぶり。」

「3日ぶりだけどね。」

そして芹香は、一人スタスタとリビングに行って、ソファーに座った。

「何?これ。」

信一郎さんの淹れたコーヒーを、指さした礼奈。

「コーヒーだよ。芹香さんも飲む?」

「飲む!」

無下にできないと知っていて、芹香は調子乗っている?

右手を上に挙げて、アピールしている。


「それで?今日は何の用事?」

「あら、婚約者の家に来るのが、そんなに変?」

私は声にならない苛立ちを感じた。

「芹香さん、俺達は正式に婚約した訳ではないから。」

「そうだったわ。ごめんなさい。」
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